Friday, November 18, 2005

陶淵明 陶潜 詠荊軻 詩詞世界 碇豊長の詩詞:漢詩 taoqian taoyuanming

Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye


陶淵明


              東晉 陶潛
詠荊軻

燕丹善養士,
志在報強
招集百夫良,
歳暮得荊卿。
君子死知己,
提劒出燕京。
素驥鳴廣陌,
慷慨送我行。
雄髮指危冠,
猛氣衝長纓。
飮餞易水上,
四座列群英。
漸離撃悲筑,
宋意唱高聲。
蕭蕭哀風逝,
淡淡寒波生。
商音更流涕,
羽奏壯士驚。
心知去不歸,
且有後世名。
登車何時顧,
飛蓋入秦庭。
凌厲越萬里,
過千城。
圖窮事自至
豪主正營。
惜哉劒術疏,
奇功遂不成。
其人雖已歿,
千載有餘情。


******

詠荊軻 
                       
燕の太子は  善く 士を養い,
志は 強きに  報いるに 在る。
百夫の良を  招集し,
歳暮に  荊卿を 得
(う)
君子は 己を知るもののために 死す,
劒を提げ  燕京を 出づ。
素驥は  廣陌に 鳴き,
慷慨して  我が行を 送る。
雄髮は  危冠を 指し,
猛氣は  長纓を 衝く。
易水の 上に  飮餞し,
四座  群英を 列ぬ。
漸離  悲筑を 撃ち,
宋意  高聲に 唱ふ。
蕭蕭として  哀風 逝き,
淡淡として  寒波 生ず。
商音  更に 涕を流し,
羽奏  壯士 驚く。
心に知る  去りて 歸らず,
且つ有るは  後世の 名。
車に登りて  何れの時にか
顧ん,飛蓋  秦庭に入り。
凌厲  萬里を越え,
として 千城を過ぐ。
圖 窮りて  事 自ら至る,
豪主  正に 營たり。
惜い哉  劍術 疏にして,
奇功  遂に 成らず。
其の人 已に歿すと 雖も,
千載  餘情 有り。


*****************


◎ 私感註釈

※陶潛:東晉の詩人。
※荊軻:燕の刺客。。この詩に出てくる人名や故事については。前記、荊軻『易水歌』の頁に詳しく述べているので、そちらを参照。この詩の展開は、『史記』「刺客列傳・荊軻」に基づいている。
※燕丹善養士:戦国燕の太子・丹は、よく志士を養成している。 ・燕丹:戦国燕の太子、丹のこと。 ・善養士:よく志士を養成している。志士に好待遇をしていることをいう。
※志在報強:太子丹の「善養士」のねらいは、強秦を討ち滅ぼすことにある。 ・志在:太子丹の(善養士)のねらいは。 ・強:強秦、暴秦をいう。・:秦王朝の姓。
※招集百夫良:何百人もの中から、優秀なものを選抜して。
※歳暮得荊卿:年の暮れに、荊軻を。 ・荊卿:荊軻に対する敬語的表現。
※君子死知己:男は、自分の価値を知って待遇してくれる者のために、命を投げ出すものである。『史記』「刺客列伝」に何カ所か出てくる。「趙襄子最怨智伯,漆其頭以爲飮器。豫讓遯逃山中,曰:『嗟乎!
士爲知己者死,女爲説己者容。今智伯知我,我必爲報讎而死,以報智伯,則吾魂魄不愧矣。』乃變名姓爲刑人,入宮塗廁,中挾匕首,欲以刺襄子。」や、「可奈何!士固爲知己者死」である。
※提劒出燕京:暗殺のために、剣を持って、燕のみやこ・燕の京を出発した。 ・燕京:現・北京の南西にある。
※素驥鳴廣陌:白い馬は、広い道で鳴いた。「『風蕭蕭兮易水寒,壯士一去兮不復還!』復爲羽聲
慷慨,士皆策目髮盡上指冠於是荊軻就車而去,終已不顧。」とあり、荊軻は、馬車に乗っていった。『史記』では別に白い馬とは書いていないが、「冠以太子及賓客知其事者,白衣冠以送之。」という喪服の白衣を暗示しているか
※慷慨送我行:心高ぶらせて、わたしの壮行(の会を)して(くれた)。前出ピンク字以下の部分に拠る。 ・素驥:白い駿馬。 ・驥:〔き;ji4〕駿馬。良馬。 ・廣陌:広い道。・陌:みち。あぜ道。市中の道。
※雄髮指危冠:(荊軻の)雄々しい髪の毛は、高い冠を衝き上げた。前出青字の部分に拠る。
※猛氣衝長纓:昂揚する気概は冠の紐を衝き上げた。 ・纓:〔えい;ying1〕冠の紐。
※飮餞易水上:太子丹をはじめとして皆、喪服の白衣を着て、易水の畔で選別の宴を開いたこと。「冠以太子及賓客知其事者,皆白衣冠以送之。
至易水之上,既祖,取道,高漸離撃築,荊軻和而歌,爲變徴之聲,士皆垂涙涕泣。又前而爲歌曰:『風蕭蕭兮易水寒,壯士一去兮不復還!』復爲羽聲慷慨,士皆策目,髮盡上指冠。於是荊軻就車而去,終已不顧。」
※四座列群英:周囲には、多くのエリートたちが列席して。
※漸離撃悲筑:高漸離は、悲しげに筑を奏でた。 ・漸離:高漸離のこと。筑の名奏者で、荊軻の親友。荊軻亡き後、その思いを引き継いで、皇帝になった秦の始皇帝を暗殺しようとするが果たせなかった。(前掲書)。
※宋意唱高聲:宋意は高らかに歌った。 ・宋意:人名。太子丹の「善養士」の一人で、歌の名手。『史記』刺客列伝には出てこないようだが、『文選』では、『易水歌』の前書きに出てくる。
※蕭蕭哀風逝:風は蕭蕭として哀しげに吹き抜けていく。荊軻が歌った前出『風蕭蕭兮易水寒,壯士一去兮不復還!』を指す。
※淡淡寒波生。
※商音更流涕:商声はもの悲しく、涙が一層流れた。 ・商音:商声。後出の「羽奏」羽声とともに音楽の階調の名称。宮、商、角、徴、羽の五音がある。詩の 表現から推察して、商声はもの悲しく、羽声は勇壮なものということになる。『史記』では「爲變徴之聲」では、みな涙したが、「復爲羽聲」になると慷慨した たある。
※羽奏壯士驚:羽奏の雄々しさに奮い立った。「復爲
羽聲慷慨,士皆策目,髮盡上指冠。」に拠る。
※心知去不歸:もう二度と帰ってこないことを知っている。『風蕭蕭兮易水寒,壯士
一去兮不復還!』に基づいている。
※且有後世名:後生にきっと芳名が伝わることだろう。 ・且:まさに…んとす。 ・後世名:後生に伝わる芳名。
※登車何時顧:振り返ることもなく、ひたすら前方を見て。 ・登車:馬車に乗る。 ・何時顧:何時振り返ったのか。振り返ることもなく、ひたすら前方を見て。『史記』の「於是荊軻
就車而去,終已不顧。」に拠る。
※飛蓋入秦庭:勢いよく行く(荊軻の乗った)馬車は、秦の領域に入っていった。 ・飛蓋:勢いよく行く馬車。飛車。 ・秦庭:秦の領土。或いは、秦国の朝廷。
※凌厲越萬里: ・凌厲:〔りょうれい;ling2li4〕しのぎすぐれていること。勇ましく奮うさま。 ・越萬里:遥か離れたところまで伝わっていく。
※逶過千城:うねうねと曲がりくねって、多くの町を通り過ぎた。 ・逶:〔ゐい;wei3yi2〕くねくねと斜めに行くさま。 ・過千城:多くの町を通り過ぎる。
※圖窮事自至:(捲いていた)地図を展げていくと、その出来事は自然と起こった。「秦王謂軻曰:“取舞陽所持地圖。”軻既取圖奏之,秦王發圖,
圖窮而匕首見。因左手把秦王之袖,而右手持匕首堪之。未至身,秦王驚,自引而起,袖絶。」に拠る。
※豪主正營:勇猛な君主(秦王・政)も、本当にあわてふためいた。 ・豪主:強豪の主人。ここでは、秦王・政を指す。 ・正:ちょうど。本当に。 ・營:〔せいえい;zheng1ying2〕うろたえおそれる。 ・:おそれる。どきっとする。あわてる。
※惜哉劒術疏:残念なことに、剣術にうとかった。『史記』「刺客列伝」の最後の部分に「魯句踐已聞荊軻之刺秦王,私曰:『嗟乎,
惜哉其不講於刺劍之術也!』」を蹈まえている。 ・惜哉:惜しいことだ。 ・哉:形容詞などの後に付き、感嘆を表す。 ・疏:うとい。よくわからない。充分でない。
※奇功遂不成:奇蹟は、ついに起こらなかった。暗殺は、果たせなかったということ。・奇功:ここでは、暗殺をいう。 ・不成:成功しない。
※其人雖已歿:その人(荊軻)は、すでに没してもう亡くなったけれども。 ・歿:死ぬ。=沒。
※千載有餘情:千年経った今も、その情念は残っている。


               ***********

◎ 構成について

韻式は「AAAAAAAAAAAAAAA」の平韻一韻到底。韻脚は「卿京行纓英声生驚名庭城營成情」。平水韻で見れば下平八庚(英京驚卿生行情營成)平九青(庭)になる。この作品の平仄は次の通り。「燕」は国名では、になる。「冠」は名詞では、になる。


   
○○●●●,
   
●●●○○。(韻)
   ○●●○○,
   ●●●○○。(韻)
   ○●●○●,
   ○●●○○。
(韻)
   
●●○●●,
   ○●●●○。(韻)
   ○●●○○,
   
●●○○○。(韻)
   ●●●●●,
   ●●●○○。(韻)
   ●○●○●,
   ●●●○○。(韻)
   ○○○○●,
   ◎◎○○●。(韻)
   ○○●○●,
   ●●●●○。(韻)
   ○○●●○,
   ●●●●○。(韻)
   ○○○○●,
   ○●●○○。(韻)
   ○●●●●,
   ●○◎●●。(韻)
   ○○●●●,
   ○●●○○。(韻)
   ●○●●○,
   ○○●●○。(韻)
   ○○○●●,
   ○●●○○。
(韻)
   

2003.4.27
     4.28
     4.29
     5.13
     5.22完
   

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